「この役は、私にしかできないと思ったんです。」
そう語る本田望結さんは、まだ6歳でした。
その言葉には、背伸びや虚勢ではなく、不思議なほどの静けさがあります。
まるで、自分の心の奥にある声を、そのまま信じていたかのようなまなざし。
3歳で芸能界デビューを果たし、子役として、そしてフィギュアスケーターとして、常に“選ばれる世界”に身を置いてきた彼女。
華やかに見えるその道のりは、決して順風満帆という言葉だけでは語れません。
小さな体で味わった悔しさ、守られていた時間、そして「それでもやりたい」と思えた気持ち。
本田望結の子役時代を振り返ると、今の彼女を支えている芯の強さが、幼い頃から静かに、けれど確かに育まれていたことが伝わってきます。
本田望結の子役時代は、母の手を握る人見知りの3歳から始まっていた
幼い頃の本田望結さんは、意外にも人見知りな子どもでした。
3歳で子役やキッズモデルを始めたばかりの頃は、現場でも母の手をぎゅっと握り、後ろに隠れていたといいます。
「おはようございます」「ありがとうございました」と挨拶ができただけで上出来。
大きなスタジオ、知らない大人たち、初めての空気。
それらを前にすれば、緊張してしまうのはごく自然なことです。
それでも不思議なことに、カメラが回ると空気が一変しました。
泣いていたのが嘘のように表情が変わり、恥ずかしさも消える。
その瞬間を目の当たりにした大人たちは、「スイッチが入る子だね」と口を揃えて驚いたそうです。
小学生になると、仕事の自分と学校の自分を自然と使い分けるようになります。
テレビの世界では“しっかり者”。
一方、学校では年相応に甘え、笑い、友だちと過ごす素の自分。
その両方を無理なく行き来できたのは、周囲が「特別な子」としてではなく、一人の子どもとして接していたからかもしれません。
無理をしすぎず、背伸びをしすぎず。
本田望結の子役時代は、静かに、そして丁寧に土台を築いていった時間だったのだと感じます。
本田望結の子役時代に訪れた転機――『家政婦のミタ』で芽生えた確信
大きな転機となったのは、7歳のときに出演したドラマ『家政婦のミタ』。
視聴率40%を記録した社会現象的ヒット作で、阿須田家の次女・希衣役を演じ、一躍その名が知られるようになりました。
この役も、もちろんオーディション。
しかも、何次にもわたる大規模な選考でした。
最終オーディションで、兄役・妹役との組み合わせを試す中、
望結さんの中に、これまでに感じたことのない感覚が芽生えます。
「希衣ちゃんは、私にしかできない。」
それは、根拠のない自信ではありませんでした。
何度も落ち、何度も悔しい思いをしてきたからこそ、自分の中の“合う・合わない”がはっきりとわかっていたのかもしれません。
京都から東京へ戻る新幹線の中で、母に「絶対受かるから」と言い切ったほどの確信。
何百回もオーディションに落ちてきたからこそ、母は簡単に信じきれなかったといいます。
それでも、その日のうちに合格の知らせが届き、母は涙を流して喜びました。
一方の本人は、少し照れたように「ほら言ったでしょ」と笑ったそうです。
幼いながらも、自分の感覚を信じ抜いた瞬間。
本田望結の子役時代の中でも、ひときわ輝く、大切な場面です。
本田望結の子役時代が教えてくれた「芝居は勝ち負けじゃない」という気づき
子役の世界も、フィギュアスケートの世界も、結果がすべてに見える厳しい場所です。
選ばれる人がいれば、選ばれない人もいる。
その現実を、望結さんはとても幼い頃から知っていました。
けれど、たくさんの「落ちる経験」を重ねる中で、彼女はあることに気づいていきます。
芝居は、勝ち負けではない。
ただ、その役に合う人がいるだけなのだと。
そう思えるようになった背景には、人生の節目で出会った大人たちの存在がありました。
『家政婦のミタ』で共演した平泉成さんからかけられた
「好きなことをたくさん見つけられるって、すごいことだよ」という言葉。
芝居もフィギュアも、どちらも本気で向き合っていい。
その一言が、迷いの中にいた少女の心を、そっとほどいてくれたように感じます。
小さい頃は“運命”だと思っていた出会いが、
今振り返ると“必然”だったと感じられる。
本田望結の子役時代は、人との縁に抱かれながら育ってきた時間でもありました。
本田望結の子役時代は今も続いている|家族への想いと“小さい頃の自分”というライバル
望結さんは、7人家族の中で育ちました。
子役時代はオーディションのために京都と東京を行き来し、両親を独占する時間が多かったといいます。
その分、きょうだいに対して罪悪感を抱いていたことも、正直に語っています。
現在はひとり暮らし。
にぎやかな家庭で育ったからこそ、最初はホームシックにもなったそうです。
それでも、その時間があったからこそ、家族の存在の大きさを改めて感じられたのかもしれません。
学業にも真剣に向き合い、移動時間に宿題をこなしながら、早稲田大学社会科学部へ進学。
姉・本田真凜さんも大学に在学し、それぞれが自分の道を歩いています。
「ライバルは、小さい頃の自分です。」
そう語る望結さんは、今も子役時代の自分と対話し続けています。
泣いていた3歳の自分、確信を持った6歳の自分。
そのすべてに向かって、「今、ここまで来たよ」と、そっと伝えているようです。
本田望結の子役時代は、過去の栄光ではありません。
今の彼女を静かに支え続ける、あたたかくて確かな原点。
そう思わせてくれるところが、何よりもこの人の魅力なのだと感じます。

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